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「ノアにもきっといつか現れるよ。この人しかいない、って人」
「いるでしょうか。そんな人」
もうすぐ二十歳を迎えるというのに、俺にはそんな出会いはまだない。だからまるで夢物語のように感じるのだ。
「ようこそお越しくださいました。王妃さま、王子さま」
村長に迎えられ、村を案内される。小さいがとても穏やかでいいところだった。ここで一時でも父様が暮らしていたのか。
「懐かしいな」
「え?」
「ここだよ、俺が住んでたところ。今はもう他の人が住んでるんだね。当たり前だけど」
懐かしむように見上げた一件の小屋。少し古ぼけた小さな小屋に父様が・・・・・・?
父様は元々王族でも貴族でもなかったらしい。出身についてはあまり詳しく聞いたことはないが、身寄りがないとは聞いたことがある。
父様も、俺と同じように孤児なんだろうか。
でも、そう考えると父上はなんと心が広い方なんだろう。身寄りのないそれも跡継ぎも生めない男である父様を王子妃に迎えたのだ。それこそ、愛がなければなし得ないことだろう。つくづく、偉大なる人たちだと思う。
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