終わりの日

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「なんか知らないけど、元気出せ。な?」 「別に元気だし」 「そうか? 今にも泣きそうな顔してなにを言う」 「別に泣きそうなんかじゃないし」  不貞腐れてそう言うと、トワはそうかそうかってニコニコしながら頭を撫で付ける。  いい加減やめてほしくて手を払うと、嫌そうな顔ひとつせず相変わらず笑ってる。変なやつ。 「お前さ、そのリボンいつもつけてるよな」 「え? ああ、そうだな」 「なんか思い入れでもあんの?」  左の手首に巻き付けたリボン。エドワード様からいただいたリボンは、どうしても手放せなかった。本当はこれをエマに渡さないといけなかったのに、どうしてもと勝手を言ってしまった。  そうすると、カイルが同じものを城下で手に入れてくれたのだ。すべて手作りなため色合いは若干違うが、パッと見わからないだろう。エドワード様だって細かい色合いまでは覚えてはいないだろう。  そうして手元に残ったそのリボンを、俺は肌身離さず手首に巻き付けているのだ。  俺がエドワードさまと過ごした日々の名残。あの日々が嘘じゃなかったという証。  エドワードさまが俺に似合うと与えてくれたもの。でもそれさえも、俺ではなく”エマ”にだということに、俺はいちいち傷ついてる。  きっと、忘れることなんてできない。  例えもとの世界に戻れたとしても。  エドワードさまを好きになった事実は、決して忘れることなんてできないだろう。
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