違和感

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 それなのに、フォレスタ王国のエマという姫は、これまで出会ってきた姫君とどこか違った。  大切に守られて生きてきたような雰囲気はなく、明るく活発そうな姫だった。俺の存在に怯えている風だったにも関わらず、いつのまにかなつくように側に来た。  俺の話に笑い、楽しそうに話す。  そして、身を呈して俺を庇った。  自分が毒矢に傷つけられ苦しんでいる最中、口にしたのは俺の身の安全だった。  傷跡が残ると言われても、なんともないように笑い、謝罪ではなく礼を求めた。  祭りでは、楽しそうにはしゃぎ、思わずリボンまで贈ってしまう始末。  自分の行動に自分で驚いた。なんなのだろうか。この気持ちは。今まで感じたことのない気持ちだ。  はやる気持ち。ふとしたとき、なぜか頭に浮かぶのは、あの姫の笑顔だった。  騎士たちを迎えにいくのだと、嬉しそうに話しているにも関わらず、なぜか泣きそうに見えた今朝のこと。今はそれが気になってしかたがない。早く戻ってこないだろうか。そんなことを思う自分にもほとほと驚いてどうしようもない。 「エドワードさま、エマさまがお戻りになられました」 「・・・・・・そうか」  今すぐ駆けつけたい気持ちを、従者の前だと押さえつけ、なんともないように装った。そんなことをしないといけない状況に、眉を下げる。  どうしてしまったのだろうな、俺は。
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