エドワードという男について

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エドワードという男について

 女装をしての生活にも、ドレスを着ての生活にも、少しずつ慣れてきた。慣れって怖い。  慣れると今度は暇を弄ぶようになってしまった。 「庭になら散歩がてらでてもいいですよ」  そうカイルに許可を取り、メイドをつれて庭に出た。どこに行くでも従者が必要らしい。  一人になりたくても、なれない。  お姫様の生活ってなかなか大変なんだな。  庭はとても綺麗だった。ベンチに腰を掛けぼんやりと色とりどりの花を見る。俺の知ってる花から、初めて見る花もたくさんある。その初めて見る花が、俺の世界にはない花なのか、ただ俺が知らないだけなのかは判断がつかないけれど。こんなことでもなければ、こんな花に囲まれた場所なんて来るようなタイプじゃなかった。  花は花でも、華のある女の子の方がいいもんね。  そんな女の子に俺は殺されそうになったんだけどーー。  ここに来る直前の記憶。道路に突き飛ばされた体。冷たい刺さるような言葉に、迫り来るトラック。あんなことがなければ、酷いことをしてるって意識なかったもんな。我ながら最低だ。  だからって、あの子のしたことは許せないけど。 「・・・・・・あ」  城からまっすぐこの庭にやって来た一人の姿。  俺はまじまじとその姿を見つめ、思わず声が出た。 「エドワード、さま」  なるべく女っぽく。普段会わないから思わず素が出そうになる。 「・・・・・・なにをしている」 「気分転換を」  なにをって、庭に来てなにをしてるもなにもないと思うが。相変わらず素っ気ない。初対面から大分経つのに、こうして顔を合わせるのが二回目なんて。
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