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終わりの日
「本日、エマさまは従者をつれお出掛けになる予定にしております。その先で、本物のエマさまと代わっていただくことになります」
決まってからは早かった。次の日には本物のエマが来ることとなり、あっという間に俺は役目を終えることになった。
腕に巻かれた包帯に触れる。残されたのは、この傷の痛みだけーー。
「代わったことが悟られてはいけませんので、あなた様しか知らないことをエマさまにご伝授いただく時間はお取りします。エドワードさまとお交わしになった話などあればすべてお伝えください」
「ーーわかった」
そうだった。俺がエドワードさまと過ごした日々は、エドワードさまにとっては”フォレスタ王国のエマ”と過ごした日々だ。俺との日々ではない。すべて身代わりの日々だ。
エドワードさまのなかにいるのは、俺ではなくエマだ。
俺、少し勘違いをしていた。
エドワードさまの優しさも、温もりも、全部俺に向けられたものだと。そんなの違うのに。俺はエマでしかなくて。エマとしてここにいるのに。
それなのに、好きになんかなってばかみたいだ。
身の程知らずも甚だしい。
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