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「デトピアが出ただと!」
宇宙に種子を飛ばすほどに、進化した人類の大半を統括するウルグヘッド・バーバリアンは、なんと君主制を敷いている。その王たる者の旗艦ディアノームに危惧すべき情報が入って来た。
「始まりのデトピア」が去った後、領内には複数のデトピアが現れた。それらを、バーバリアンは多彩、多数のソリを持って駆逐したが、被害は甚大。
やっとこさ、体制を立て直し、本来の目的、地球圏の支配。いや、人類全ての利権をその手に収めるべく、動き出していた。その、彼らの前には、またもデトピアが現れたのだ。
「報告では、領外のデトピアは協定を結び、我が国の妨害を目論んでいるようです」
整然な響きを持つ女性の声が、王に更なる脅威を与える。かつてのデトピア達は、協調など頭に無かった。ならばこそ、倒せたのである。しかし、彼らが組織的に攻めて来たらどうか? あまりのことに王は狼狽する。
それが如何ほどのものか? 見物している女性は、口元に手を当て、何かを知られまいとしている。それは残念なことに、目尻が下がっている時点でバレている。王は憤慨した。
「貴様はデトピア共の異常さを、その目に収めていないから、解らぬのだ!」
薄紫の髪を掻き揚げながら、女性に向き直った王に対し、隠すことを止めた女性が、同じく薄紫の髪を揺らしながら、笑い声を上げた。このままでは、収まれぬ王は、次の言の葉を飛ばそうとすると、指一本を差し出され静止させられた。
「お兄様。お忘れですか? ソリに変わる兵器を。それにお早い決断がないと、可愛そうな部下達が、ゴミに」
デトピアの猛攻によって、前線を支えている重装甲ソリ、ファランクスが次々と撃沈されている。このように巨大な戦艦を米粒のような人間が叩き折る光景など、前時代の人間に想像出来ただろうか。
その化け物の手は、実弾特化のガルバルディーや特殊武装のウイザードまで伸びている。それらが討たれれば、部下の命どころか、バーバリアンの命運すらもチリと化すだろう。
「迷ってるヒマはない。私が行く。サンタを出せ」
苦戦に苦戦を重ねた末、対デトピア用に開発された海鉄の巨人。王はこの機体に全てを託す。
赤き装甲、波打つ白き模様。青く光る幻視の眼光には何が映るのか。
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