最初の救出

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「もう……、先生にもマーヤさんにも敵わないな」 そう呟くユマにマーヤは、にこにこと笑っていた。 寮の食事と言えどもユマたちにとっては、それは家庭の味。マーヤが身寄りのない三人の母代わりでもある。 親のいる他の寮生たちとは違うのだ。 だが、心配をかけたとしてもやらなければならないことがある。それは将来が官僚になることを義務付けられている三人には決して譲れない。 人を救う仕事をしたいと思っている三人は皆が寝静まった深夜にこっそりと寮を抜けた。 月がぼんやりと三人を照らす。カッカッと靴を鳴らして走る三人が向かうのは、町外れの空き家。 「トラクちゃん、間違いないね?」 「ええ。そこで臓器売買に使われる人たちが殺されてるはず。私がいれた情報からそれは今夜。急ぎましょう」 昼に三人は、その空き家を下見に行ったが綺麗なものだった。 だが、ユマは黴の生え方が多いと気づいていた。 もしかしたら……。そう呟いたのはアイバーンだった。 その考えを聞いたユマは確信したのだ。どのように殺されているかを。 闇夜を突き進むと空き家が見える。 幾人かの見張りの姿が見える。 それを見ても三人は歩みを止めず、ユマは右手より火の玉を出して見張りへと投げ付けた。 見張りは、それを咄嗟に避けて剣を手に三人へと襲いかかる。 それよりワンテンポ遅れたが剣を振り切る速さにアイバーンに敵う者はいなかった。
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