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異変
三人が助け出した子供は三日三晩眠り続けた。
いきなりユマたちが連れてきたというのに、ファムもマーヤも煩いことは言わずにユマたちが望むようにユマたちの住む寮で眠っている。
その眠り続ける子を守るためにユマたちは、その間、行動は起こさなかった。自分たちに自信があるからこそ、行動には移さない。
だが、煩く言われないからとファムやマーヤに説明しない訳にはいかず、ファムの授業のあと、ユマはファムを廊下で呼び止めた。
「先生」
ファムは、ふむと頷き立ち止まる。
「説明する気になったのか?」
その横にはトラクもアイバーンもいる。
「俺たちは今、人身売買、臓器売買のグループを追っています。あの子は多分、バラされる直前だったんです」
ファムは真っ直ぐにユマたちを見つめる。
「危険なのは承知です。俺らは将来を約束さるた身であるから、その犯罪に立ち向かいます。その時、先生はあの子を守って欲しいんです」
ユマにもトラクにもアイバーンにも家族はいない。だから教師が父であり寮母が母。その大切な人に伝えない訳にはいかない。
「分かった。私の力が必要ならすぐに言ってくれ。上にも伝えておく」
ファムは、無理をするなと言わない。それは無駄だと知っている。ユマたちは、拾ってもらった恩を全力で返そうとしている。余計な言葉は足枷になる。
それを知るファムだからこそ、ユマたちは背中を預けられる。
ファムと別れて寮に戻ると、食堂で眠っていたはずの男の子がスープを飲んでいた。
「起きたのか?」
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