その続き

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おれは、大学生になった。 弟は順調に跡目として成長しているらしい。 少しくらい兄弟らしいことしようと誕生日プレゼントを贈ったことがあるけれど、特に反応は無かった。 顔を合わせたときに喧嘩をするというほど仲が悪いわけではない。 微妙な距離感があるというだけだ。 中林さんに、聞いたら父や中林さんとは普通らしい。 今まで競わされる様な形になってしまっていたのが駄目だったのかもしれないとか、色々考えるけれど、本当のことは分からない。 今はもうほとんど会うことも無い弟に何もかも押し付けてしまったという罪悪感があるだけだ。 カリスマ性のある彼は別の場所でその能力を生かせたのかもしれないみたいな傲慢なことを考えてしまうことがある。 ヤクザのうちの人間なのにこんなことを考えるなんて変なんだろう。 実際中林さんがヤクザであるという事にも、父親がヤクザであるという事にも何も違和感は全くない。別にヤクザをやめて欲しいと思ったことも無い。それくらい普通なのに、弟のことだけは上手く考えられない。 ◆ 大学関連のことで父親に報告があった。 書類上は全て母が保護者になっているため、普段はあまり寄らない本家の門をくぐる。 懐かしい。と思ってしまうのは、中林さんでの生活が長いからだろうか。 一時期は困ったような態度をしていた組員たちもおれが通るとさっと頭を下げる。 玄関を入ったところに人影がある。 声をかけようとして固まる。 弟だった。 その首元には、おれが前プレゼントしたマフラーが巻かれている。 「兄貴……」 「それ…‥」 挨拶の前に思わずマフラーを指さしてしまう。 それに兄と呼ばれたことに気が付く。 多分少し照れてしまって動きがおかしい気がする。 弟も照れたように頬を染めてそっぽを向いている。 「ただいま。久しぶり……」 思ったよりちゃんと声がでてそう言えた。 おれが弟のことを気にしていた様に、弟もおれのことを家族として気にしていてくれたのだろうか。 そうだと、かなり嬉しい。 「……おかえり、あにき」 というか、こっちが家なんだからもっときなよとつっけんどんに言われる。 その弟がかわいくて、思わずクスリと笑ってしまう。 「そうするよ」 俺が言うと、そのまま弟はそっぽを向いたまま部屋の方に引っ込んでしまう。 もう少し話したかったと思う。 けれど、多分おれと仲良くしすぎると色々まずいことも分かる。 いらぬ疑念がわきかねない。 だけど、少しだけ、たまにはこの家に帰ってきたいという気持ちになる。 そう伝えたら、中林さんはなんて言うだろう。 そう思いながら久しぶりに父さんとあった。 了
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