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第2話 隅田、目覚める。
次の日の朝。
隅田はいつものように、けたたましい目覚まし時計の音に夢の世界から無理矢理ひっぺがされた。
(うーん、くそぅ……もう朝か……。今日も仕事だぁ……)
眠さとかったるさで、隅田は駄々っ子のように何度もゴロゴロと寝返りをうつ。
(あーヤダヤダ、起きたくねえぇぇ! 働かないで金が欲しい!)
隅田はイライラに任せて、勢いよくバンッと目覚まし時計の頭を叩いた。
アラームが止まった。
同時に、枕元でチャリンという音がした。
小銭が落ちたような音だ。
そして、何故か手にはカサッという紙切れの感触がある。
(……え?)
不思議に思い、隅田は起き上がった。
枕元を見ると、さっき止めたはずの目覚まし時計が、そこにはなかった。
代わりにあった物は──。
(……え? え?)
隅田は目をしばたたかせる。
そこにあったのは、千円札と小銭。
お金だったのだ。
確かに、目覚まし時計を止めた感触はあった。
触れる瞬間まで、目覚まし時計はそこにあったはずだ。
それなのに、どうして今そこに千円札と小銭が置いてあるのか。
よくよく思い返すと、その金額はこの目覚まし時計の価格+税だった。
(まさか……)
隅田は金を拾い上げ、じっと見つめた。
──金が手に入る、不思議な力──
昨日の酔いどれ青年の言葉を思い出す。
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