R第2話 side D

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……佳子さん、敬語だった。結城さんに。 長い、付き合い……だよな? 何で?あれ?結城さんっていくつ? 『断固年上派』がさっきの残像とともに頭の中をぐるぐるする。 時が止まったかのように、見つめあった二人の……残像とともに。 思わず上原さんに聞いた。 「ねぇ、やっぱり男は年上がいいの?」 ──── しばらくすると結城さんが、企画のフロアに入ってきて、有村さんに確認を取る。 俺の視線を感じてだろう。 話が終わる頃に……こちらに顔を向ける。 正面からの顔。相当なイケメンだな。 でも、怯まずに聞いた。 「……結城さんて……おいくつですか?」 「26です」 26!俺の1個上! 「営業の男は全員そうです。あ、大友はもう27になったのか……。学年が彼だけ1つ上だそうです。まあ、同い年です、ほぼ」 「……マジですか……俺1個しか変わらないのかぁ……」 しばらく、視線を合わせたまま……さっきの残像に妙な引っ掛かりを覚えて疑問を口にした。 「もしかして……佳子さんと、お付き合いされてます?」 今、企画(この)の部屋は俺たち3人だけ。 「……ええ」 もし、ここで否定、もしくは誤魔化すような事があるなら 佳子さんを誘ってやろうと思ってた。本気で。 なのに…… むしろ、俺の気持ちを見透かすように、彼も真っ直ぐにそう言った。 「うわー! こっちかぁ。……そっかぁ」 怪訝な顔の結城さんに、有村さんが補足を入れてくれる。 「年末の忘年会でね、佳子ちゃんはフリーだって聞いて……喜んだ男が少なからずいたんだよ。 でも、『予約入ってるからダメ』って営業(そっち)のイケメンに言われたんだよ。だから、てっきり……(そっち)かと……」 ……何だよ……。 「いいなぁ、あんな……おもしろ……可愛い彼女で」 「なぜ、私だと?」 「結城さんデレてるから」 ……からかうつもりが、無反応。こっちが恥ずかしくなってすぐに否定した。 「嘘です」 それなのに…… 「まぁ、可愛いんでね。彼女」 そう言って、軽く微笑んで営業へと戻って行った。 笑った。結城さんが。 可愛いって。 「あはは、とてもじゃないけど、無理だね。あれは」 有村さんが可笑しそうに肩を震わせた。 「あー、もう! やられた!」 そう言うしかなかった。 年下! もう、年下じゃねーか! そう言うことか。 何でもいいんだ。好きになれば。 つまり、好きなんだ。彼を。そして、彼も。 笑みが溢れてしまうほど。
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