R第23話 side D

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──── 久しぶりにエレベーターで一緒になった中野に 「行くか?」 そう言って、飲むジェスチャーをした。 「おう、いいな!」 「相原(あいつ)……は、来ないか。もう」 「だなぁ。俺達に使う時間が惜しいくらいなんじゃね? 今は」 中野がそう言って笑う。 つい、中野を伺うような目になってたのか中野が俺の肩に手を回した。 「んだよ、終わった話だっつの」 「ん、だな」 そう言って俺に 「百合ちゃんでも誘う? 俺はイイケド?」 と、言って来たもんで、中野の手が俺の肩から離れる程にビクついた。 「え?」 「何だ?別れたのか?」 「いや、知ってた……のか?」 「あー、何だよ。隠してたつもりなのか?」 「いや……そういう訳じゃ」 分かりやすいんだよ、俺。出まくってんじゃねーか。こうなりゃ、総務の人間全員知ってるな。 ……ああ、社内中も、時間の問題か。 いっか、営業部なんて全員隠す気もない…… 「そっか、じゃあ良い事教えてやる」 「何だよ」 「上原な、モテるぞ」 「え? は? なん? 何!?」 「美人だしな。で、寛大だから」 意味深な中野の目に…… はぁ、嫌だ。からかわれやすいのか、俺。分かりやすいが故に。 それとも…本気でモテてたりするのか? ……俺と百合の事に気付くなら、こっちはどうだ? 「谷川さんは?」 思わず聞いてしまった。 「谷川? あー、彼氏いんじゃね? でもあいつも……モテるな。あいつは会社の顔のだからなぁ。よく総務に問い合わせがある」 「問い合わせ?」 「息子の嫁にしたいタイプなんだと」 「……めっちゃ、分かる」 中野の反応を見たけど、涼しい顔。 気づいてないのか?それとも気づかないフリを? よく分からん奴だしな。 「ま、今日は二人で行くか」 そう言って、外へ出た。 なーんで、イルミネーションの中、男ふたりで歩かなきゃなんないんだ。 とは、思うけど。楽しい夜だ、こんの日も。
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