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──クリスマスイブ当日。
「今日は泊まらないからね」
朝から待ち合わせして、一通り街をうろうろし、買い物済ませてやって来た俺の家で、ハンバーグを捏ねながら百合がそう言った。
あー……何この温度差。
「何で?」
「さすがにイブに友達の家に泊まるって言うのは、嘘っぽいでしょ? それに……」
立ち上がって、百合の後ろへ回り込んだ。
「ちょっと、今、ダメ。生肉触ってるんだから、向こうへ」
「抵抗出来ないとこ、狙ってんの。で、何?
『それに……』?」
「明日、我が家のクリスマスパーティーでしょ? そこに、泊まったまま二人で登場したら……そんな目で見られるし、堂本くんだって、どんな顔していいか分からないでしょ?」
……俺?そんな目?
バッと、百合の顔が見える位置へ自分の顔を傾けた。
「うん……来て、くれる?」
無抵抗で、俺を押し返す事も出来ない百合に、思いをぶつけるようにキスをした。
百合の涙目に気づいてようやく唇を離した。
肩で息をして
「苦しいよ、もう」
百合がそう言ったから……
今度は短いキスで我慢して
「すっげぇ、楽しみ」
そう言った。そのつもりではあったけど。
で、後から妙に緊張してきたけど……
これ以上、ここにいると晩飯が遅くなりそうだから……ソファに戻って、離れとこう。
じっと見る俺の目に、百合が恥ずかしそうに笑う。
「顔、ニヤけてるよ」
なんて言われても、引き締める気もない。すっげぇ、楽しみなんだから。
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