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会社の忘年会。
珍しく一人でいる絶世の美女と呑んでいたら
これまた、絶世のイケメンが参戦してきた。
どうやら、呑ませてはいけなかったらしい。
酒が入り、より一層の中条さんの色気を、吉良さんが男の色気で相殺してくれながら、雑談をした。
さっきまで饒舌だった中条さんが、思いっきり吉良さんには塩対応だ。
……仲、悪いのかな。
悪かったらこないか、横に。
嫌われてる?……いや、ないか。
吉良さんはそんな中条さんに気にする素振りもなく、寄り添う。
俺は、総務の宮司さんと中野、営業の相原と話す佳子さんを見ていた。
「へー! じゃあ、佳子さん今フリーなんだ!」
中野の大きな声が聞こえた。中野は宮さんに怒られてるけど……
いや、中野だって佳子さんが気になってるからそんな話になって、フリーにテンションが上がったのだろうけど。
……フリー?
フリーって……
彼氏いないって事……
100%俺の意識と耳はそっちに持っていかれた。
「……おい、佳子ちゃん、フリーだってよ」
有村さんが、俺にそう言った。
「……ちょ、ここで言わないで下さいよ」
営業部の前で。わざとだな、有村さん。ちょっと睨んだけど、知らぬ顔。
「……何? 企画にも佳子ファン多いの?」
察しのいい吉良さんがすぐに反応する。
佳子さんファンは多い。あの開発部の間でも。
好きってなるとまた別なんだろうけど……。
「いや、だって……可愛いじゃないっスか。ふわっとして」
正直に言った。正直な気持ちだから。
「行ったら? じゃあ……佳子ちゃんとこ」
有村さんが、佳子さんの方を指差す。
行こうか、マジで。と、思って背中を壁から少し浮かしたその時
「駄目だよ」
バッと音がするくらいの勢いでそう言った吉良さんの方を向いた。
「佳子ちゃんは、ダーメ」
「何でですかー。佳子さんフリーの期間なんて短いんだから」
「もう、予約入ってまーす」
「え? マジで……」
「そそ、若者はこれからなんだから、諦めなさーい」
そう言って、ニッと笑う。
……え……アンタかよ。予約かよ。
じゃあ、行けよ、あっち。
男と喋ってるけど?いいのか?まあ、男ってか社内だけど。
……余裕?その割りにはここで俺に牽制?
よく、分かんねぇ。予約って何だよ。
モヤるわ。
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