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R第2話 side D
営業部へと向かう。
それから、佳子さんとまた上へ上がった。
「お疲れでーす」
「お疲れ様~、最近この組み合わせよく見るわねぇ」
総務部の綾さんの言葉に
「そうなんです。若者引き連れて、いいでしょ~」
佳子さんがそう言った。また、若者扱いです。
「ほんと、羨ましい。って佳子ちゃん変わらないんじゃないの?」
そうそう、かわらない。そんなに。
「……4つ。でも、堂本さんすごく若く見えるでしょ?」
「……確かに。大学生っていってもいけそうよね」
「そうっすか~? 綾さんも、若い方が好きなんすか?」
……そんなに若く見えるかなー。
まぁ、若い方……がいいのか?
「ちょ、“も”って何よ。私、歳上派だし」
佳子さんがそう言った。良くないのかよ。
「私も!」綾さんもそう言う。
「若い方がいいっていうのは、男性だけじゃないの? ねぇ、宮さん」
佳子さんが、綾さんの隣の宮司さんに振った。佳子さんにとって年上の男性である宮さんに。年齢だけでなく、大人の男性である宮さんに。
いいなぁ。宮さん、佳子さんの年上で。
「あはは、どうだろうね。好意を持ってもらえるなら、どちらでも」
「宮さんが好意を持つのは?」
尚も聞き返す佳子さんに、皆が驚く。
いいなぁ。興味、持って貰えて。
いいなぁ、年上で。
「……分かりやすい人」
「年上年下、関係ないですね、それ」
一応、つっこむ。当たり障りのない、大人の模範回答。
「うん、どちらでも。お二人は? なぜ年上?」
「精神年齢が、元々女性の方が高いでしょ?だから、年上でやっと釣り合うのかなぁって」
そう答えた綾さん
精神年齢か。
だとしたら、佳子さん若いけどな。
「……年上からしたら、私も“若い部類”に入るから!」
と、答えた佳子さん。
「……まあ、落ち着いてるから……パッと見……佳子ちゃんの方が若く見える……」
そう言った宮さんが、佳子さんにだけ笑いかけた。
何だよ。俺……?いや、誰と?誰のこと?
「何で、僕には聞いてくれないんスか?」
ふて腐れた中野に、みんなで笑って、この話は終わった。
ちなみに、中野はオールオッケー。そんな感じ。
そのフロアを出ると
「若く見られたい理由でもあるんですか?」
そう聞いた。
「……前にね、『他に好きな人ができた』って振られた事がある。その“好きな人”が、私よりだいぶ……若かった」
「そのトラウマ?」
「いや、結局……やり直したいって向こうから言われたし……引きずってない」
「やり直したんですか?」
「してない。もう、彼氏いたし」
「……この前まで付き合ってた人?」
「……うん」
「年上?」
「……うん」
やっぱり、か。
そんなにいいもんかな、年上って。
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