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「いわ…いわば、エゴとエゴのシーソーゲーム!」
「ミスチル好きなんだ? 話が合いそうだね。ドライブ行こうよ、天神屋店休日の第3火曜日に。うちの店長と僕と君たち2人の4人で」
「あ、はい、行きます!」
流れるような誘い文句三段活用に感心しつつも呆れて固まる倫音を無視し、さらにプラス5ミリ宙に浮きながら、紗奈は即答した。
「私は、遠慮し…」
「天崎さん!」
断りかけた倫音を、ディフェンスの形で紗奈が遮る。
「カッチカチは、卒業しましょ!」
「カッチカチ?」
「カッチ…カ…今日~のカープは、勝ーち、勝ーち、カッチカチ♪」
「カープファンなんだ。うちの店長、広島出身だから喜ぶよ!」
紗奈の下手な誤魔化しに、これまたわざとらしいくらいに塩谷が食いついた。
「それと、僕たちが誘った件は、そちらの丸川店長には内緒にしてくれるかな?」
「唇に媚薬を塗られても、言いません!」
かや乃寿司のブースへと帰った塩谷は、握り寿司を並べ終えた店長の佐田に近づくと、何事か耳打ちする。
頷いた佐田は、倫音たちに向かって小さく手を振った。
「これって、ダブルデートってやつ!? 私は塩谷さん狙いだから、堅そうな店長さんは、天崎さんに任せるわ。カッチカチ同士で、案外うまくいくかも!」
とりあえず勝手に浮かれる紗奈のことは放っておいて、倫音は確信した。
ちらし寿司の折り詰めを手渡された時と同様に、塩谷からも珠輝への口止めを約束させられたということは…。
この誘いも、佐田からの差し金であることを。
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