1.うんめいの再会

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「え、まさか!」 思わず声高になってしまった紗奈は、口元を押さえた。 「美人で私と同い年と思えない妖艶さを持つ天崎さんが?」 「そう思うわよね。紗奈ちゃんみたいに十人並みの容姿なら、さもありなんって感じだけど」 「やだ、店長。こう見えて私、経験済みですよ」 「えっ、いつ? 誰と? どこで? どんなシチュエーションで!?」 「高3の秋です。塾の講師アルバイトに来ていた大学生の方と、車の中で。受験勉強でお世話になったお礼の意味もこめて」 「まさかの、カーセッ…で、その人と今も付き合ってるんだ?」 「いえ。彼女のいる方だったので、それっきり」 「やだー。紗奈ちゃん捨てられちゃったの~。可哀想~」 「あ、でも、大学に入ってすぐに同じゼミの彼氏ができて、今も続いてるので大丈夫です」 「紗奈ちゃん、意外と肉食~。豚まんみたいな色白丸顔だってのに、肉食~。そうなのよ。天崎さんや私みたいな『高嶺の花』的な存在は、男性に敬遠されがちなのよね…」 容姿をディスられた上に自分自身をさらりと『高嶺の花』だと大きくぶっ込んできた珠輝に、紗奈は不思議と不快な気持ちは沸かなかった。 自分の母親と変わらない年代であるにも関わらず、初体験話を嬉々として聞き出す少女のようにピュアな珠輝を可愛いとさえ思えていたからだ。
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