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履歴書と筆記試験では、100パーセント通過できる自信がある。
一次面接でも、採用の手応えを感じられるやり取りができていると自負している。
それが、いよいよ最終面接に入ると、途端に掌を返されるのだ。
『今回は、ご縁がなかったということで…』
『選考の結果、採用を見合わせていただくことに…』
ひどい時には、最終の四次面接の果てに、こんな断り方もされた。
『女子の採用は行っておりません』
「履歴書送った時点で言えよ!」
「あ…天崎さん?」
「すみません。つい、心の声が…」
滅多に感情を表に出さない倫音が声を荒げたことに驚きつつ、珠輝は提案した。
「縁起でもないこと言うようだけど、もし…もしもよ、希望の職種が全滅したなら、うちの正社員にならない?」
「えっ?」
「最大手の企業を狙ってるのは知ってるし、そこに見合った人材だってことも分かってるのよ。だけど、必ずしも実力者が正当な判定を受けて上がれるとも限らないのが社会だからね」
数ある『マダム・ヨー』の支店の中で、1,2を争う利益率を上げている天神屋デパート店の店長を任されているだけのことはある。
珠輝の推察は的を得ていたし、倫音が最も訴えたかったことだった。
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