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━━━━30分前。
「豚まん1つ、ください」
3年ぶりに目の前に現れたタカシは、マダム・ヨーの制服姿の倫音に気づき、目を見開いた。
「倫音ちゃん? え、メイド? コスプレ!?」
「アルバイトです。この店の制服です。タカシさんは、たん…」
「タン、タン、タヌキのぉ~♪」
探偵に、なれましたか?
そう尋ねようとした倫音を、ベタな歌唱でタカシは遮った。
「あら、お知り合い? どういったご関係?」
詮索好きな珠輝が、食いぎみに問いかける。
倫音とタカシは、同時に口を開いた。
「無関係です」
「元彼です」
「え?」
「他人です」
「元彼です」
「え、え?」
全く違う答えを述べているにも関わらず、混声合唱団のように2人の声色は心地よくハモっていた。
珠輝に触発されたように装いながら、軽快なステップを踏みつつ、タカシは倫音に歩み寄る。
「探したよ、会いたかった。もう一度やり直したいなんて虫が良すぎる申し出かもしれないけど、気が向いたら連絡して。これ、新しい番号~!」
淀みなく言い終えると、素早くメモを取った手帳の切れ端を渡した。
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