プロローグ

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18歳で親元を離れた。 親元と言っても、家族は自分以外に、たった1人。 友人のような、姉のような、時には年少の妹・娘のような振る舞いすら見せる母と、18年間を共に過ごした。 「電話はしないよ。嫌いだから」 もちろん、嫌いなのは電話を掛ける行為のことであって、娘に対して述べた言葉ではない。 けれど、 「もっと他に、言い方があるでしょう…」 この時は、そう思った。 宣言通り、離れている4年の間に母は一度も電話を寄越さなかったし、こちらからも電話どころか、一度も帰郷すらしなかった。 ただ、手紙だけは月に一度のペースで行き交わせた。 性格は、まるで正反対の母娘だったけれど、唯一共感できたのは、この一言だった。 「書くことは好きなのよ、私」
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