3.よこしまな真実

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「佐田英治、28歳。若くして『かや乃寿司』天神屋支店長に就任。郷里の広島に妻子を残して単身赴任中だが、独身と偽り不倫三昧」 「依頼主は、奥さんですか?」 食い気味に尋ねる倫音に目線だけ静かに合わせ、タカシは頷く。 「夫である英治の帰省中、自家用車内に浮気の痕跡を発見。調査を依頼」 「奥さんの目的は?」 「離婚は考えていない。精神的苦痛を得たとして、全ての不倫相手に慰謝料を請求することが大筋の目的…そりゃそうだな。幼子2人を扶養せにゃならんのだから」 抑揚なく資料を読み上げていたタカシだが、最後の一文だけは己れの感想を述べたようだ。 「慰謝料、取れるんですか? 妻帯者であることを隠して近づいたのは、夫の方なのに」 「取りかかりはそうだとしても、持ち物や暮らしぶりを見た時点で、相手の女も気づかないはずはない…という展開に持っていきたいらしいよ。妻側の計画としては」
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