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水の引いた河川敷はヒヤリとした空気を纏っていたが、背筋が寒くなったのは、それだけのせいではない。
押し込められそうになった際にチラリと見やっただけだが、佐田の自家用車であるミニバンも、20代の独身男が乗り回すには違和感が見受けられた。
後部座席で飲食しやすいよう、シートバックには複数のドリンクホルダー付きポケットが設置してあったり、ダッシュボードには子ども受けの良さそうなキャラクターマスコットが飾ってあった。
自分の趣味だ、と言いくるめてしまえばそうかと思えなくもないが、勘の良い人間ならば気づくだろう。
特に、珠輝のように聡明な女性ならば…。
「少し、待ってもらえますか。この件を公にすること」
地べたに正座する勢いで、倫音はタカシに向き合い、懇願した。
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