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シフト表が漏洩してるんじゃなかろうか。
そんなくだらない自分自身の考えを、紗奈は鼻で笑った。
要するに、このオバサンは暇なのだ。
1日中、デパ地下で時間を潰すことが生き甲斐で、気の弱そうなアルバイトの女の子が1人になったタイミングを見計らって、冷やかしにやって来るのだ。
今日こそは、注意しなくては。
そうは思っていても、存在自体が威圧的なオバサンを前にすると、足がすくむ。
何度も出て行きかけては引っ込む、という行為を繰り返した挙げ句、しゃがみ込んでいた背後から救世主の声が響いた。
「遅くなりました、すみません」
「天崎さん!」
『マダム・ヨー』の制服であるフリルたっぷりのエプロンとカチューシャ風の三角巾という出で立ちであるにも関わらず、宝塚の凛々しい王子役のごとく、同じくアルバイトの天崎倫音が颯爽と売り場に現れた。
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