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「菜摘荒れてんな」
背後から声を掛けてきて私の隣に腰掛けたのが、やはり友人の律弥。
肩をすぼまして困ったね、って表情で返事を返す。
「ほら菜摘。しっかりしろよ」
律弥は学生時代から面倒見が良い。彼に促されて、パーティーを途中で切り上げて、菜摘と二人先に帰らされてしまった。
菜摘が何を言い出すか心配したみたいだけど、私達だってそれぐらい、分別はあるんだけどな。律弥心配し過ぎ。
なんて考えていたら、タクシーに乗り込んだ途端、菜摘が運転手に行き先を告げた。
「帰らないの?」
菜摘が告げたのは深夜まで営業が続く、有名な飲食店通り。キャバクラやホストクラブ、24時間営業の喫茶店が立ち並ぶ。女一人では少し歩きにくい通りだ。
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