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抑えきれない衝動のまま、駅の方角へと走る。もしかしたら流生には迷惑かもしれない。そんな不安を打ち消しながら走った。
「何処まで行かれます?」
見つけたタクシーに飛び乗り、流生のマンションがある住所を告げる。居るかいないかもわからないのに。気持ちばかりがやけに焦り出す。
カバンの蓋を開き、リップを取り出そうとして、携帯電話が小さく点滅をしていることに気が付いた。
流生からの着信――! 走っていたから、バイブの振動に気が付けなかった。
時間はほんの少し前。流生の名前を手の平の中、何度も確認をする。
「到着しましたよ」
タクシーはマンションの脇に停車をした。
車から降り立ち、流生の住むマンションを見上げる。三階の角部屋には明かりは付いていない。
いないのかな…… その時再び、私の手の中の携帯電話が震え出した。
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