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予感なんて無かった。
それなりに上手く生きて来たから。
激しいほどに唇を重ね合わせて、涙が溢れる想いも。腰を抱くその腕に、身体が震える様に反応をすることも。だけど何も知らなかった。
目を閉じて深呼吸―― 吐息は貴方のもの。
流生の指が唇の中へ滑り込む。指先が舌にふれて口をこじ開けようとする。
「ん……っ…!」
漏れる吐息が高くなる。薄っすらと目を開けて見つめた先に、私を見下ろす流生。
流生――? 指先はまだ下唇をなぞり続けるから、頭の芯がくらくら揺れる。
荒い息を塞ぐように、流生の唇が覆いかぶさった。激しくて甘いキスに嵌まり込んでいく。
流生、逢いたかった。満たされていく身体が訴える。心が貴方を求めて止まない。
愛してる。だからお願い、貴方も応えて。
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