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【side_流生】
駆け出した先に愛里はいなかった。君を探して街を彷徨う俺に気が付いた時、自分の中にある愛里の存在に驚愕した。
いつの間に―― これほどに君を。
愛里には連絡がつかず、諦めて自宅へと戻った。マンションの入口に遠く人影が見えてくる。
「愛里……!」
繋がった携帯から愛里の声が聴こえてくる。徐々に近づく俺に君はまだ気が付かない。
愛里を背中越しに抱きしめる。ふわっと甘い匂いが漂う。抱きしめた俺の腕を、愛里はぎゅっと握っていた。身体ごと振り返るなり、愛里は腕の中に飛び込んできた。
「逢いたかった」
聞かなくてはならないことも。言わなくてはいけないことも。たくさんあったはずが、愛里を前に感情は抑えきれない。
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