881人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
揺れて動く
【side_愛里】
すごい人波。改札口から溢れ出して来る人の群れの中に彼を見つける。
「真人!」
声を出した私に気が付いて、真人が歩いて来る。
「ただいま」
「お帰りなさい」
もう一年くらい続いてる遠恋中の彼。付き合って今年で四年め。並んで歩くのは久しぶり。
「どうしたい? 食事の支度ならして来たけど」
「行く」
真人は時々、返事が短文になる。慣れたけれど。
歩く彼の手を握る。照れ臭いのか、ちょっと振り払おうとするのが真人の癖。それを構わずに手を繋ぐ。
「ちょっと痩せた?」
元々細身の方だったけど、顔も身体もどこか引き締まったような。
「週末、ジムに行き始めた」
そうなんだ。軽いショック。全部を話す必要は無いけれど、もっと早く知りたいな、それくらい。
最初のコメントを投稿しよう!