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 ***  一方の瀬戸内海某所にあると噂の鬼ヶ島。  桃太郎(きた)る。この一報に鬼達の間に動揺が走った。鬼甲と鬼乙も例外ではなく、二人は大きな体を寄せ合ってひそひそと言葉を交わした。 「あの伝説の桃太郎が……俺達もう何十年も人なんて食ってないぞ! ん? 桃太郎ってもう七十過ぎてないか?」 「今回来るのはその孫らしい。長崎のかすてーらで手懐けた三匹の情報では弱そうだと」 「でも桃太郎の孫なんだろ?」 「ああ。そこなんだよな」 「ここはオイラに任せるでし」  鬼甲と鬼乙の傍らに、いつの間にか小柄な鬼が立っていた。くりくりとした目を両者に向けて、一つ頷いてみせたその鬼に、鬼甲は桃太郎のことがどうでもよくなるほど癒されたのだった。  
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