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 ***  さて、こちらは桃一。瀬戸内海(仮)の厄介な海流を、小舟でどんぶらこどんぶらこと漕いでいき、お供0人でゴツゴツ岩の鬼ヶ島に乗り込んだ。大きな口を開けているそれっぽい洞窟がある。 「お邪魔しまーす。鬼退治に来たんだけど」  洞窟は分かれ道が多く奥行きもあったが、高い天井のところどころから日が差し込んでいたので暗くはなかった。しかし誰もいない。  場所間違えたかな、と桃一が心配し始めた時、岩陰から七尺近い大柄な赤鬼が現れた。虎柄の布を腰に巻いている。裸の上半身は特にお腹周りがブヨブヨだった。 「桃太郎が何しに来たんだ」 「俺桃一だから。ちょっと銭が欲しいから適当に退治していい?」 「なめるなっ」  赤鬼は木の棍棒を振りかぶった。遅すぎる。桃一は適当にひょいと避けて、適当に(まさかり)で切りつけた。  バーン!  鬼は自分の身長以上の距離を飛んで、近くの壁に突っ込んだ。 「あー、かったるい。せめて金棒使ったら?」 「こ……これが伝説の桃太郎……ガクッ」 「その呼び方やめてくんない? 貧乏神が王様ボンビーになって出てきそうだから。それにしても、切れないなーこの鉞。鬼の肌が頑丈なのか?」 「待つでし!」  
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