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「鬼太。お前はガキだから許してもいいけど、あっちのみたいなデカいのはそうはいかない。ちゃっちゃと成敗させてもらうぞ」
「さっきも言った通り、オイラ達は悪いことなんてしてないでしよ」
「言ってろ。どうせその辺に今まで食った人の骨でも転がってんだろ?」
洞窟の陰から「ギクッ」という声が聞こえた気がする。ほら見ろ、と桃一は悪の証拠をつかむ探検に出かけようとした。
「わー、だから待つでし、桃一さん!」
鬼太が負けじと桃一の腰に抱きついた。
「大昔の片づけ忘れた骨がちょっとあるだけでし。本当でしよ!」
「だからそっちの趣味はないってのに」
桃一は桃じい譲りの馬鹿力を数割使ってそのまま前に進もうとした。動けない。でも全力を使うのはかったるい。くっつく鬼太をやはり数割の力ではがそうとしたが、思いの外鬼太の力は強かった。
「分かった分かった。骨は探さないから離せ」
「ありがとうでし。さすが伝説の男の後継者、優しいでし。優しい男はモテるでし」
一歩下がった鬼太が、安心した様子で謎のおべっかを使った。少し、ほんの少しだけ、その気になる。
「それにしても、桃一さんは何で鬼退治に来たでし? オイラ達が人間に迷惑かけた訳じゃなさそうでしね」
「桃太郎の遺志を継いで、的な?」
「亡くなったんでしか桃太郎さん?」
「いや生きてるけど」
「ガクッ、でし」
「あー、アレだよ、男には稼がないといけない時があるんだよ」
「お金目当ての犯行でしか」
そう言われるとただのごろつきみたいだ。桃一は反省した。そこいらの鬼の角でも一、二本、できれば十本貰って満足するべきかも知れない。上方貴族に売りつければ金になるし。
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