蜜薬 一/生存率10%

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蜜薬 一/生存率10%

朝の目覚めは、いつだって甘い香りと温もりの中で迎える。 「油断しすぎ。」 隣で寝息を立てている端正な顔を、一番最初に見て一日を始めるようになってから何年が過ぎただろうか。 人前では決して眠らないこの男が、俺の隣だとこんなにも無防備に寝顔を晒している。 苦笑を浮かべつつ男を残してベッドから抜け出せば、スルリと俺の肌を撫でるようにしてシーツが滑り落ちた。 「ふぁ~。相変わらず曇天か。気が滅入るってこの事だよね。」 遮光カーテンを開けたと同時に現れた窓は、気温差で曇り、水滴を浮かせている。 それをカーディガンの裾で適当に円を描くようにして拭えば、外は暗い曇天模様で、地上には見事に雪を積もらせていた。 一面の銀世界。 すっかり見慣れてしまったとは言え、それを毎朝見る度に、綺麗だと柄にもなく思ってしまう。 「今日も真っ白だよ。」 ソファに置かれたテディベアと目が合って、俺は外を指差して独り言を吐く。 暖房が十分に効いているからこそ、永遠に広がる純白を悠長に見物できているのだろう。 だけど今日はこの後、買い出しに行かなくてはならない。 それを考えると、無理だとは分かっていても雪が止むのを願わずにはいられなかった。
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