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スマさんに綺麗に洗って貰ったふかふかの毛が、良いクッションとなり眠気を誘う。 うつらうつらとしながら、道を挟んだ向かいの家の前で、井戸端会議をしているおばさんたちの声が聞こえて来た。 ちょっぴり気になって耳を立ててみる。 「あそこのゴミ屋敷、やっと片付けたみたいだけどどういう風の吹き回しかしらねぇ」 「ねぇ。気の強いお婆さんみたいだし、意地悪そうで苦手だわぁ。着物着て、ちゃきちゃき歩いちゃってるけど、元はゴミ屋敷の人間だもの。ろくなもんじゃないわよ」 立てていた耳を、だらんと横に倒した。聞かなきゃ良かった。 人間ならあんな小さな話し声なら聞こえなかっただろう。 「耳が良すぎるのも、考え物だね」 いつの間にかスマさんが玄関に座っていた。 少しがさついた声のスマさんは、サンダルを履き、門の傍にあるポストに回覧板を取りに行った。 さっきのおばさん達は、わざとらしく作り笑顔を浮かべて会釈している。 スマさんも「どうも」と挨拶を返していた。 「あんなの気にすんじゃないよ、いつもの事さ。私はタロさえいればいいんだ。あの人たちは私の心なんて見えやしない。何もわかっちゃいないの。自分の人生に関係の無い人間にどう思われたって、痛くも痒くもないんだよ」 回覧板を抱えたまま、僕の頭を撫でる。 「それにしても通気口なんて良い涼み場所を見付けたねぇ。でも明日から台風が来るみたいだよ。物干しざおを下ろして、植木鉢も縁側に入れておかないとね」 スマさんは意地悪じゃない。だってこんなに優しい顔で笑うんだもの。 目を三日月みたいにして、笑い皺をたくさん刻んで。
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