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どれくらい眠っていただろう。
窓の向こうは相変わらずの曇天で時間がわからない。
窓にはバタバタと雨が打ち付けていた。
スマさんは帰ってきていないらしい。
部屋の中は静まり返っていた。
僕が畳を踏む音が静かな空間に際立つ。
ぶしゅんとくしゃみをして、玄関に立ってみたが、スマさんの足音は聞こえなかった。
それからは玄関で丸まってドアを見つめていたが、スマさんが帰って来る気配はない。
雨の空も次第に色濃くなって、あっという間に真っ暗になった。
お腹がきゅるると鳴る。
遠い空から、雲の中で暴れる雷鳴が聞こえる。
一際大きな雷の音に、僕は身震いした。
それと同時に、身体の底から不安と恐怖が沸き上がる。
スマさんは大丈夫だろうか。もしかして、もしかして……。
僕は開いていた裏口から家を飛び出した。
顔に、身体に、雨が打ち付ける。
ふわふわの毛がべたりと体にへばりつく。
雨で匂いもわからない。
家の前の通りを抜けて、古い商店街の手前で立ち止まり、地面に鼻を擦り付ける。
ふと目に入ったのは、僕とスマさんが出会った公園だ。
あの日も今日みたいな雨の日だった。
雨は嫌いだ。いつだって僕の大好きな人を奪っていく。
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