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スマさんがどこにいるのか見当もつかないまま、僕は商店街を一心に駆け抜けた。 走って、走って、曲がり角から出て来た車に危うくぶつかりそうになって怒鳴られた。 それでも走り続けた。 すれ違ったトラックに泥水をかけられたが、そんな事もうどうでもいい。 スマさんに会いたい。 どこにも行かないで。僕を置いて行かないで。   大通り沿いを走っていると、大きなサイレンの音を鳴らしながら、救急車が病院の駐車場から出て来た。 「タロ?あんた、こんな所で何やってんだい。あーあ、こんなに汚れて」 スマさんが病院の隣にある小さな建物の前で驚いた顔をして立っていた。 白いお花が刺繍されたハンカチで、僕の顔周りを拭いてくれた。 良かった。 僕は無我夢中で頬を舐めまくる。 自分の足の裏が汚れていた事も忘れて、スマさんの膝に前足を乗せて立ち上がって。 そのせいでスマさんの綺麗な着物に僕の足形が付いてしまったが、何も言わずにそんな僕の背中を撫でてくれる。 喜びを表すように、尻尾を千切れそうなくらいに振り回してじゃれた。 スマさんの身体に鼻を擦りつけると、ほんの少しツンとした匂いを感じた。
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