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「本当に宜しいですか?」   突然家にやって来た若い男性が、僕の首輪についたリードを握っている。 訳が分からない。 スマさんは僕の餌やおしっこシートが入った袋を男性の前に置いた。 きっと僕の顔は眉がハの字になって情けない表情だろう。 不安で、何度もスマさんと男性の顔を交互に見ていると、スマさんが僕の前にしゃがみこんだ。 「悪かったね。タロとの勝負、私の負けだよ。私はあんたを看取れないんだ。このままここに居たら、あんたはまた独りになっちまう。この人はあんたを悪いようにはしないよ。私が唯一信頼してる人が紹介してくれた人だから心配ないよ。最後まで面倒見てくれるから大丈夫。それに里親だって探してくれる。良い人が見つかったらその人の元で暮らせるからね」 スマさんは「ほら、行ってちょうだい」と、まるで追い払うように言った。 嫌だ。 行きたくない。 どうして、どうして。 泣きたいくらい悲しいのに涙は出ない。 代わりにぽつりぽつりと降り出した雨が、僕の頬を濡らした。   車に乗せられる。 男性がリードを持つ手が緩んだ瞬間、僕は一気に振りほどいて走り出した。スマさんの所へ。 離れたくない、その一心でスマさんの胸に飛び込んだ。
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