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ぽつん、ぽつん、と降っていた雨が、次第にその間隔が短くなる。 あっという間にサーッと雨脚が強くなった。 視界が白く濁る。 「汚いねぇ。犬ってのは、こうも見すぼらしくなるもんかい」 ふっと雨が止んだ。 藤色の着物を纏った年老いた女性が、青い傘をさして僕の隣に立っていた。 顎のあたりで綺麗に切り揃えられ、曇り空と同じような灰色の髪をした女性は、感情の読めない目で僕をじっと見下ろす。  僕も見上げてみたが、なんだかもう色々考えるのも疲れる。 前足に顎を乗せて、空き地の向こうを通り過ぎる人に目を向けた。 女性は黙ったまま、僕の視線の先にある商店街へと歩きだした。 変な人。   背筋をしゃんと伸ばし、つかつかと去っていく老女の後ろ姿をぼうっと眺めていると、ぴたりと足を止めた。 「何やってんだい。早くおいで」 その言葉に、耳をぴくつかせて顔を上げる。 おいでって言ったのか?僕に? 「それ以上汚れられたら、洗うのが大変だろう」
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