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綺麗な着物を着て、雨に濡れた紫陽花みたいに鮮やかな青い傘をさして、さぞお洒落な家に住んでいるのだろうと思っていた。
「やっぱり犬はネズミ退治はやってくれないのかい」
スマさんの家にやって来て二週間が過ぎた七月の朝。
べたべたの紙にくっついたネズミを処理しながら、からからと笑っていた。
嫌だよ、そんなの。僕だってネズミは嫌いだ。あいつらすばしっこいし、何なら僕のご飯までよこせって目で見て来るんだもの。そう目で訴えるが、スマさんには勿論伝わっていないだろう。
古い家にはあちこち隙間があるのか、二・三日に一回のペースでネズミが出る。
最初はびっくりして吠えて知らせたが、スマさんにうるさいと言われてからは、もう言うのを辞めた。
広さはあるが、物が多いせいで物凄く狭い。物が多いというか、多すぎるのだ。
訳の分からない段ボール箱が積み上げられ、紙の束や、沢山の黄ばんだ本。
幸い、生ごみが散乱しているわけでは無いが、色のくすんだボロボロの人形やぬいぐるみ、服がぎゅうぎゅうに押し込められた大きな箪笥。
とにかく足の踏み場も無くて、僕は箪笥の脇にある壁との僅かなスペースに座布団を敷いて貰ってそこを寝床としている。
「さぁ、今日は忙しいよ。朝食が済んだら買い物だ。今日も暑いからあんたの散歩は日が沈んでからだ。良いね」
僕はそれに返事するように、ぺろりと自分の鼻を舐めた。
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