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卵を溶く音。 ジュウッと熱々のフライパンに卵液が弾ける。 甘い味噌の匂いと、ご飯の炊ける匂いが、既に食事を終えたはずの僕の胃袋を誘惑していた。   スマさんの買い物は意外と早かった。 忙しいと言っていた割に、ものの二十分ほどで帰宅して着物を脱ぎ始めた。 部屋の隅の座布団で丸まりながら何やら忙しそうなスマさんの様子を眺めていると、なんとTシャツとスウェットのズボンを取り出したではないか。 スマさんのそんな姿、見た事も無い。 随分と可愛らしい花柄のシャツに着替えた彼女は、買い物袋から取り出した白い何かを手にすると、僕を呼びつけた。 「今日は大掃除とネズミ対策をするよ。タロも手伝いな」 タロは僕の事だ。 スマさんが咄嗟に思いついた名前。犬の僕に人間のような手伝いは出来ないが、ネズミの出入り口を探す係に任命された。
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