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10年後
「いやぁ、どうもどうもどうですか?景気は?」
畑を耕している俺の前に突然スクリーンが現れて見覚えのある陳腐な姿が映し出された。
「……」
「あれ?お忘れですか?若年性の…」
「何しに来た?」
「つれないですねぇ。久しぶりの再開の第一声がそれですか?」
「……用がないならどっかいけ」
「つめたい!」
「どうしました博士?!」
遠くで男がこちらの異変に気がついて大声で叫んでいる。
10年前は拳銃を振り回していたがスッカリ丸くなって今では俺の助手の様な立ち位置に居る。
「いや!なんでもない!そっちの収穫を急いでくれ!」
どうやら向こうからはスクリーンが見えないらしい「わかりました」といきのいい返事と笑顔が帰ってきた。
人は変われば変わるもんだ。
アレだけ暴れていた男も、添加物のない自然な食生活と大自然の中で生きるとまるで好青年の様な人格に変わるらしい。
「おい、用事があるなら早く済ませてくれ」
俺は皆に気付かれない様に小声で異次元人に話しかけた。
「いやぁ、実験終了のお知らせを…」
「はぁ?終了ってなんだ?どういう意味だ?」
「そのままの意味ですが」
「俺を……俺達を消すのか?」
「え?どうしてそう思うんです?」
「俺達以外を消しただろ!あの日!」
「え?そう思ってたんですか?やだなぁーそんなことしませんよ。言ったじゃないですかぁ」
「……なにを?」
「温厚だって」
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