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私は今、噎せ返るような黄色い花の香り中に横たわっている。
毛髪に一本たりとも黒はなく、白。
顔の皮膚には幾つもの皺が深く刻まれ、お世辞にも美しいとは言えないだろう。
けれど、私は幸せだった。
この〝最後〟の百年が、とても幸せだった。
「綺麗だね」
「ええ。向日葵の花はあなたの笑顔にそっくりで大好きなんです」
「僕は君が綺麗だと言ったんだけどな」
今、私は再び愛した人と共にいる。
「やっと……〝私〟という魂が形を成した気がします……」
これからまた百年、さらにその先の未来の子どもたちを、今度はここから見守っていく。
【了】
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