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もっと直人と――子どもたちと一緒にいたい。
なんて無い物ねだりなのだろう、と自嘲する。
百回目の人生は、私に初めてのことを経験させてくれた。
百回目の人生で、私は初めて誰かの為に、そして自分の為に一生懸命に生きた。
「ねえ、直人さん」
「ん……?」
直人は私より一年先に百歳を迎えた。
彼の願ったとおり、私たちには曾孫が三人いる。
我が子に、孫に、そして曾孫たちに囲まれ、直人は白い布団に横たわり、掠れた声で答えた。
「私、本当は五百歳なの……って言ったら驚きますか?」
今まで誰にも告白したことのない真実を、何にも代えがたい彼に伝えると、彼は私の大好きな笑顔でこう言った。
「だったら……五百年前から……一緒にいたかった……な」
そう残し、直人は天国へと旅立った。
*
「ねえ、お母さん」
そして、翌年。
私も直人と同じ場所、同じ布団の上で子どもたちに見守られていた。
長女の莉帆が優しく語りかけてくれるが、もう私の耳にはあまりよく聴こえない。
「お母さん、お父さんが亡くなる時に、本当は五百歳なんだとか冗談言って笑わせてたでしょ」
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