10人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「…………」
私が微笑むと、莉帆は瞳を揺らした。
「私もね、冗談言っていいかな」
私は微かに頷く。
それを見た莉帆は小さく深呼吸をしてから口を開いた。
「神様がね、夢に出てきたの。あなたのお母さんは五百年もの間魂を燃やし続けて来たけど、最後の百年間が……一番美しい燃え方をしてたって」
ああ、神様はちゃんと見ていた。
私が百回も転生させられたのは、きっと私がきちんと生きてこなかったからだ。
人を、自分をも愛してこなかったからだ。
失敗したっていい、情けなくても、カッコ悪くてもいい。
人生は、一度きりのなのだから。
「おかしな夢よね」
莉帆が笑った。私も笑った。
それから、莉帆が背に隠していた黄色い花の花束を私の眼前に差し出した。
「これ、誕生日のお祝い。好きだよね、向日葵」
向日葵。それは直人の笑顔を彷彿させるものだった。
「百歳のお誕生日、おめでとう」
その言葉を最期に、私はゆっくりと目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!