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桜の花の咲く頃に①
ウインターカップが終わって、二人で初詣行って、先輩の受験が終わって、
春の始まりはなんて早いんだろう。校庭を見上げる。
まだちょっと桜の蕾は固いかな?でも卒業式には間に合うよね。
柴崎は体育館に足を運ぶ。
「明日から新田キャプテンも、五月さんも、そして俺もいなくなるバスケ部。
うまく言葉にできないけど、今まで本当にありがとう。
そして、これからの部員をよろしくお願いします」
一人深々と誰もいない体育館のフロアに頭を下げる。
「・・・そろそろ抜けているかな?」
校舎裏でスマホをいじりながら柴崎は待ち人の安否を願っていた。
「はあっ、はあっ、はあっ、こえー!マジこえー!!」
かなりだらしなく制服をまとい根屋が校舎裏に逃げ込んできた。
「お疲れ様、五月。見事にボタンが無くなってセクシーというよりは、
みっともない」
「うるせーよ!ハイエナっていうのはああいうのを言うんだぜ!」
根屋はまだ乱れた息が落ち着かなかった。
「モテる恋人は心配だな。五月、手を出して」
「ん?」
言われるがままに根屋は柴崎に両手を差し出した。
するり。左手の薬指に異物感を感じる。
「何だこれ?」
「え?指輪ですよ?今までのように毎日のように会えないんだから牽制球です」
「あー、牽制球ねー。わかるわー。女よけだろ?って何で左手なんだよ!!」
根屋がサイズがピッタリの指輪に驚きを隠せない。
「右でファッションリングに間違えられたら意味ないでしょ?」
さらりと柴崎が言ってのける。
「俺、これから新田たちと飯食いに行くんだよ」
「なんか新田さんは、うすうす感じている感じするんだよね」
「マジでか?ウソだろ?」
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