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桜の花の咲く頃に②
「おい。手、出せ」
「はい?」
「おら早く」
根屋にせかされて柴崎が手のひらを差し出す。
手のひらに乗せられたのは根屋のネクタイだった。
「ウチのネクタイは学年色じゃないからな。使いたかったら使え」
「五月」
柴崎が根屋の唇に近づく。
「まてっ近づくな。新田が見てる。きっとどこかで見てる!」
慌てて根屋がポケットの中を探り柴崎に握らせる。
「ほらよ!」
「カギ?」
「大学行くのに俺家出るから。それにどーせ女連れ込ませる事させねえんだろ?使いたいときに使えよ」
柴崎は大事にカギを見つめ、
「女どころか男も入れませんから」
「いや、それ、ちょっと違くね?」
「おーい、そろそろ行くぞー根屋」
遠くから根屋を呼ぶ新田の声がする。
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