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サボり魔の三年生
コートの隅でボーっとのびている。
ガスッ!
「いって!うわっ痛ってえ」
「休憩時間はまだ先のはずだが根屋」
「新田、痛てえよ。容赦ないボール当てるなよ」
根屋にコントロールよくボールを当てたのはキャプテンの新田だった。
「んー。俺ちょっと貧血で休憩~。新田PGやって」
「キャプテンに上から目線で指示とはたいした三年生様だな」
「いやいや、同い年に何言うの?それにIH終わったから新キャプテンに引継ぎだろ?」
「新キャプテンか、柴崎にやらせたかったんだがな」
柴崎の名前が出て根屋の体がピクッと無意識に反応した。
新田は根屋の顔をちらりと見て、
「お前の貧血休憩は5分間だ。さっさとコートに戻れ」
「根屋先輩、どうかしましたか?新田キャプテンがPGやっていますけど?」
「柴崎。何でもない。戻る」
『なんでお前はそんなに簡単にONとOFFの切り替えができるんだ?』
「お疲れ様ですー」
部活が終わると柴崎は女子マネと一緒にタオルを配り、
コートの片付けに入っていく。
根屋はただタオルで汗をぬぐうだけだった。
「新田ー。俺片付け今日パス」
根屋はすたすたとコートを出る。
「何やってんだよ根屋!お前最近少し変だぞ?」
止める新田の声も聞かず、根屋はすたすたと
更衣室に向かい誰よりも早く学校を後にした。
「ふー。あれキャプテン、根屋先輩は?」
柴崎がコートに根屋の気配が無いことに気づいた。
「おー、アイツサボって帰りやがった」
「そうなんですか」
公園の隅に置かれたベンチに座り根屋はうつろに空を見ていた。
「なんか。わかんねえよ柴崎」
「お前のことがわかんねえ・・・」
「俺のことが好きなのはわかった。すごく優しくしてるのもわかった。
それに俺に・・・触ることも好きだってわかった」
「でも、それでどうなんだ?俺はあと半年で卒業だ。
だからそれまでの思い出作りか?記念にでもしたいのか?」
「俺は・・・お前に変えられてしまった気がするのに
お前はどうしたいんだ?どうするつもりなんだ?」
「俺はどうしたいんだ・・・」
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