谷口風花

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谷口風花は林拓海が唯一信頼できる近親と言っても過言ではない。 拓海に父親はいない。母を含むどの親族からも父親の話はされていない。 一般常識範囲でいるだろうと自覚しているが、その限りでしかない。 兄弟もいない。母方の祖父母ともに他界している。 そして母は。 「そう」 風花は自然に拓海の額に手を伸ばす。 拓海は少し照れたようだが、拒否するような動作はしない。 「先生どうしたの」 「準備室今誰もいないから、いつもみたいにお姉って呼んでいいよ。やっぱり少し熱あるかな」 「ん、なんで」 「いや、拓海最近顔色悪いなって思って。はいこれ」 そういって冷却シートを差し出してくる。 出したのが引き出しからだったからあまり冷えてなかった。 「いいよ。こんなのしてじゃ恥ずかしくて外歩けないよ」 「だめよ、悪化しちゃう」 「いいって」 「だめ」 「いらない」 「だーめ」 「大丈夫だから。ゴホッゴホッ」 「ほら、貼ってあげるから髪上げて」 「ちが、今のは喉がガサってなっただけで、」 そんな拓海を無視して、冷却シートを取り上げ表面の透明のシートを剥がしてしまう。 仕方なく拓海も髪を上げる。 「はい、これでおっけい」 拓海は少しやさぐれる。 「なーに、どうしたの」 「別にここまで心配しなくても。大したことじゃないよ」 「心配なの」 「、、、」 「今でもあの時の拓海を思い出すの」
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