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基本的に透は優柔不断で八方美人だ。
人と争ったり揉めたりするのは大嫌い。
だからこそ、私と美雪と二股掛けて、結果、最悪の事態に陥っちゃったんだろう。
「白井さん、…咲良。一体何を…」
私のことを咲良、と言った透に、美雪は不満そうな顔をした。
…若いなあ。思ってること全部表情に出てる。
美雪はもう別れたんだから、私と透は無関係だって思いたいのかもしれないけれど、3年も付き合ってたんだし、婚約だってしてた。会社の人だってみんな知ってる。
関係は断ち切れても、そこに至るまでの絆も思い出も、ゼロになるわけじゃないんだよ、美雪ちゃん。
「御園さんにご挨拶してたんです。透さんにはもう、不必要に近づかないでくださいね、って」
ドヤ顔の美雪に、透は一瞬げんなりした表情になった。
「君が咲良にそんなこと言わなくていいよ。会社にも僕から伝えるから…」
「はーい」
「白井さん。今日また連絡するよ」
「お待ちしてます」
にこりと笑うと、美雪はまだ待機してたエレベーターに乗り込んだ。
やれやれ。思わず透と私は同時にため息をついた。
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