第9話 万事解決には程遠い

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しーーーーーーーん。 そんな擬音語が聞こえてきそうなくらい、事務所の応接室は静まり返った。 やば。派手にやり過ぎた。後悔しても、遅い。 とりあえず乗り出してた上半身を戻そ。そう思った瞬間、テーブルの上に、ぽたっと何かの雫が落ちた。 ぎゅって身を縮こまらせて、声を殺して、美雪が泣いてた。 私、ばかは嫌いだし、この子のしたことも、きっと一生許せない…けど。 少なくとも、この子は透みたいにごまかしたりしないで、自分に正直に生きてる。 「透」 スマホを取り出して、私はその中からブクマしてた美雪のインスタのページを開いた。 うわ、以前に奈津と見た時より、写真が増えてる! エコー写真が胎児がでかくなったせいで、画面に収まりきらず、却って意味の分からないシルエットに! …でも、その意味のわからない写真の横に、美雪が必ずちょっとずつ文章を添えてる。 ○月×日検診。10w2d。順調に大きくなってる。体重は平均よりちっちゃいみたい。私が悪阻でご飯食べられてないからですか、って聞いたら、違います、って言われた、良かった。 ○月×日。下腹部出血。怖くなってすぐに病院に行った。赤ちゃんは元気って言われたけど、ちょっと私が疲れてるみたい。点滴を打ってもらう。人生初めて。なかなか終わらなくて、寝ちゃった。でも、終わったら元気100倍!…は大袈裟だけど、5倍くらいにはなった。 透くんの赤ちゃん、大事に守らなきゃ。そのためには、私がしっかりしないと! 拙い文章だけど。でも単純な分、美雪の言葉には迷いはない。 さらっと読んでから、透にスマホを渡す。 「これ読んでも、あんたは自分の子じゃないって疑うの? 美雪はちゃんと母になろうとしてるんだよ? あんたは、何やってんの? 透。それとも、赤ちゃん生まれて、DNA鑑定でもしてもらってからでないと、あんたは父親にはなれないの?」 「……」
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