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透はぶすっとした顔で、私にスマホを突っ返して来た。
「美雪、ごめん」
そして美雪にも不愛想ながら、謝罪する。
「…み、御園さん、あり…がと…ございます…っ。私、あなたのこと嫌な人だって…思ってたけど、いい人だったんですね」
一言多いし。別にあんたに『いい人』言われても、嬉しくないし。
そもそも接触もなかった私のこと、どうして…。
「――ねえ」
「はい」
「私のこと嫌な奴って思ってた…ってどうして?」
本人に面と向かって聞くことじゃないのはわかっていたけれど、引っかかることがあって、どうしても確かめずにはいられなかった。
私の質問に、明らかに挙動不審になる人物がいる。そいつをちらちら目の端っこで追っかけながら、私は更に質問を重ねた。
「前にも課長とデキてるとか、何とか言ってたじゃない…? あれって…誰から聞いたの?」
「さ、咲良、今、そんな話は…」
「なんで! 慰謝料減額の理由にしてるんだから、立派に話し合いの案件のひとつでしょ?」
横槍入れてきた透をぴしゃっと封じ込める。
もう答えはわかりきってるな、こりゃ。
美雪はきょとんとしながらも、おずおずと口を開く。梵さんも冴木さんも、彼女の言葉の行方を黙って見守る。
「…透さんが言ってましたけど…違うんですか?」
…ああもう。情状酌量の余地なし。
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